TRANS ARTS TOKYO終了しました。

ART EVENT MUSIC TOKYO

10/21〜11/25まで神田の旧・東京電機大学で行われたTRANS ARTS TOKYOが無事に終わりました。

まずはこの機会を与えて頂いた佐藤直樹さんをはじめとする美學校「絵と美と画と術」の講師陣のみなさん(マジック・コバヤシさん、都築潤さん、池田晶紀さん、小田島等さん)に感謝したいと思います。

そして「絵と美と画と術」の現役・OB・OGの受講生のみんなや、「絵と美と画と術」プレゼンツのトークショーに出演して頂いた、大原大次郎さん、ひらのりょうさん、池田光宏さん、笠原出さん、さらにTRANS ARTS TOKYOを企画した中村政人さんと当イベントの運営をされていた事務局の皆さんに感謝したいです。

さらにトークショーでお話をさせて頂いた木下栄三さんと、この企画の進行をされた久木元さんや、トークショーに来て頂いたお客さんや神田の人々にも感謝です。

同イベント内で「燃える人影」の演出をし、その準備や調整などで忙しいにも関わらず、僕にインスタレーションをすることをススメて頂き、さらにそのためのアイディアをたくさん出して頂いた生西康典さんとそのお仲間の方々にも感謝いたします。

僕の展示の宣伝をしてくれたり見に来てくれたり作品を買ってくれたりご飯を一緒に行ってくれたりいっぱい笑ったりした学生時代からの友人たちにも感謝です。

そして何よりも、僕の展示に来て頂き、色々な感想を頂いた温かいお客さん全員に言葉が追いつかないほどの感謝をしております。

 

ありがとうございました。

ぶちかましたったぜ。

 

回想をすると、この話を佐藤直樹さんから頂いたのは9月下旬頃で、真っ先に『Greatest Hits』の部屋のプランを思いつきました。

いらなくなったレコードのジャケットに絵具を塗りたくったりコラージュをし始めたのはもう3、4年前からで、以前の展示でも数枚程度見せる機会はあったのですが、いつか全部並べてみたいという思いがずっとあり、今回はようやく陽の目を見ました。が、、この展示はジャケットもレコードも片面ずつしか見せることができていないので「いつか両面見せられる日を・・・」という思いも強くなりました。

とは言え、部屋の壁に「世界に一枚しかないレコードをレコード屋の壁に飾られたレアなレコードのように飾る」という積年の思いは形にすることができました。

 

部屋のコンセプトからは逸脱はしてますが、窓辺が寂しかったので木彫りのクマを置いたり。

こちらは買って下さる方が複数現れてとても良かったです。

 

余った壁には「3331アンデパンダン展」で賞を頂いたバカ・コラージュ(数百枚の素材全てがそれぞれに意味や関係を持つように貼られているのだけど、写真だとほとんど伝わらないんだよな。。とは言え現物見ても全てのディテールを見るのは至難。だから”抽象”なんだけど。。)な『Landscape of abstract cityー抽象都市の風景画』をかけたり。

 

部屋を出た廊下側の壁には、実は「3331アンデパンダン展」にどちらを出品しようか前記の作品と最後まで迷った、同時期に制作した『Line, Surface & Phase』という作品をかけたり。これは古雑誌の罫線や帯状にカットした色ページのみをひたすら重ねて構成した作品です。

 

TRANS ARTS TOKYOの作業に入ったのは10/5からでした。

展示室として使われた場所は旧・東京電機大学の11号館12Fで、まずはそのまま放置されていた元・研究室や元・教授室の部屋の什器の撤去と掃除などをはじめました。その作業自体は僕の使う部屋に関しては1日で終わりました。

『Greatest Hits』の部屋も実質1.5日で搬入・設置は終わりました。

 

問題はもう一つの部屋でした。

佐藤さんから展示プランを出すよう言われた時に、すぐ思いついたのはレコジャケとレコードで満たされた『Greatest Hits』の部屋だったのですが、もう一つは(この部屋を何かで貼り倒したい)(切ったり貼ったりしてる自分の日常ではそうそうできないような思いっきりバカげた切り貼りをやってみたい)という純粋な衝動みたいなものが強烈にありました。

それはおそらく「3331アンデパンダン展」に出品した作品の制作がとても緻密な作業だったのと、3331の大きくて真っ白な壁にかかった自分の作品を見て(なんかサイズがセコい・・・)と感じてしまったことと無関係ではなく、結果的に賞を頂いたのにも関わらず、前記の思いを抱いてメラメラとわけのわからない闘志を燃やしていた記憶があります。

そんな経緯で僕の初期の作品では割とモチーフとして使われていたものの、最近はあまり使っていなかった女性誌のキャッチコピーなら集めるのも容易なので、これで部屋を埋めてやろうと思いました。

タイトルは『万葉』としました。

 

作業を始めた当初はこんな感じでした。

始めてすぐに思いました。

(これ、10/21のオープンに間に合うんだろうか・・・いやいや、間に合わなきゃダメでしょ・・・でも思った以上に埋まってかないな・・・やっばいなコレ。。)

佐藤さんや「絵と美と画と術」の人達に心配をされても「何とかして埋めますよ〜大丈夫っすよ〜アハハ!」と虚勢を張っていましたが、内心は(うわ〜!!心配もされるわこりゃ!!マジデヤバイィィィィ!!!)というような心境でした。

 

そして毎日毎日毎日来る日も来る日も来る日も、神田に通うことになるのです。。。

 

10/5に作業を開始して約2週間で会期が始まってしまう。このペースが多少の技術の向上で早くなったとしても、部屋の全てを埋めるのは難しい。始まる前に抱いていた衝動と現実の自分の能力の無さの埋めがたいギャップを呪うような気持ちで、少なくともオープンには人がいくらか見られるように1面の壁だけは埋めることにし、あとは公開制作というこれまで自分がやったことのない展示方法をとることにしました。

 

これはオープン直前の10/19に撮影した写真です。

この写真の画面外はまだ貼られていない壁面が相当の面積ありました。

しかし少なくとも人が入って見る程度の体裁を整えるところまではこぎ着けました。

 

TRANS ARTS TOKYOが始まって以降も毎日会場に足を運ぶ日々でした。

行かなかった日が一日だけあります。

愚かだなあと今になって自分でも思いますが、当初の僕のプランの中では、『Greatest Hits』の部屋では僕のつくった音が流れる予定でした。

絵具を塗りたくったレコードに生じる大量のノイズや針飛びの音をサンプリングして、その音を再構成したサウンド・コラージュを流したかったのです。

その音の編集作業をするために一日だけ休んだのですが、これはこれでそんなに簡単にできそうもなく、結局次の日からやはりキャッチコピーを貼る日々となったのでした。

音も合わせた展示はいつか必ずや。。。必ずや。

 

公開制作をしながらの展示というのは今回が全くのはじめてで、当初は(作家が中途半端な状態の部屋を晒してそんなの見て面白がる人なんているんだろうか・・・はぁさっさと終わらせて消えたい)と思っていました。

しかしフタを開けてみれば杞憂どころか、このやり方はえらい自分にフィットしてるかもしれないとすら思いました。

貼る素材が女性誌というキャッチーなものであったということもありますが、展示室内に入ったたいていのお客さんが貼られた「ことば」を口にして読むのが聞こえます。

それをきっかけに僕がお客さんに話しかけて色々と解説というか、女性誌の「ことば」に対する僕なりの感想などを言って、お客さんもそれに応じて感想を言ってくれたりしました。

それを毎日貼りながら繰り返すことによって、はじめにぼんやりと考えていたこの部屋がどういう部屋なのかということが、お客さんとの対話を通じてものすごく豊かに練れてきた手応えが確かにありました。

このような体験は初めてであり、とてつもない快感ですらありました。

想像するに、ミュージシャンが観客の反応に応じて演奏を高めていくような、芸人が舞台上でその日の客の反応をうかがいながらくすぐりつつネタに入っていくような感じはこういうものじゃないだろうか、と思いました。

とにかく、展示を見たお客さんと、壁に貼られた大量の女性誌のキャッチコピーを共有し(時にはTwitterやFacebook上で)、互いに「これ(ここ)はいかなるものか」というものを考え、練り上げることができたという喜びがありました。

 

「これ(ここ)はいかなるものか」については相当数の文字数を要しそうですので、またの機会(近いうち)に必ず書きたいと思います。

 

『万葉』の部屋の壁が全て埋まったのは11/21(水)でした。

会期が始まってから予想通りというか、接客も忙しくなかなか貼るペースも上がらず、それでも会期が終わる週末には絶対に終わらせようと思っていたので何とか間に合いました。

 

TRANS ARTS TOKYO会期終了後は取り壊されるビルなので、貼ったままのこの部屋を惜しんでくれる声を何人もの方々から頂いたので、良い展示になったのかなと、とても満足しています。

刹那の声が聞こえてくる女性誌のキャッチコピーは、期間限定のこの部屋で線香花火の閃光のように瞬けば良いと思っているので、僕はこれでじゅうぶん満足です。

これからもやろうと思えばいくらでもできますし。どれくらい期間が必要かというデータも取れましたし。

ちなみにコピー短冊を貼った期間は10/5〜11/21までの47日間。

総面積は316,187.5㎠。旧タイプのビックリマンシールが13,723枚分。畳が約19枚分のサイズです。すごいのかどうかよくわかりませんが。卓球台が約7.5枚分。新宿アルタヴィジョンの約1/3のサイズです。どんどんよくわからなくなるのでやめましょう。

使った糊はTOMBOWの「シワなしPitN 21g」を27本でした。

 

この部屋を埋めた21日から、妙に僕の居場所がなくなってしまった様な感じがして落ち着かなかったので、最終日だけインスタレーションをしました。

床にイラストボードを敷き、その上には赤く染まった水を入れ大量のキャッチコピーを漬けた瓶。さらにその上には赤く染めた水の張られた洗面器とその中に設置された噴水機があります。

噴水から噴き出る赤い水にはバニラエッセンスが混入されて部屋にほのかなバニラの匂いがします。

CanCam、VIVI、JJなどの「赤文字系」をメインに埋めた部屋の真ん中に、時代を超えて繰り返し循環される女性の夢や欲望の泉をイメージしました。

噴き上げられ洗面器の外にこぼれる赤い飛沫は床上のボードに抽象画を描きます。

噴水に当てられた光は、欲望やコンプレックスを刺激するコピーで埋められた壁に、夢や欲望の泉の陰影を映し出すようにしました。

噴水の向こう側には成金趣味に飾られた聖徳太子が怪しげに照らし出され、さらにその奥の窓の向こう側には、現実の東京の夜が輝いています。

部屋の中には噴水の水が水面に落ちる音が不規則な音を響かせています。

 

 

以上、TRANS ARTS TOKYOでの展示を振り返った日記でした。

みんなで一緒に考えた『万葉』についてはまた改めて書きたいと思います。

 

展示写真記録はこちらでももう少し見ることができます。

http://watabego.com/works/portfolio/trans-arts-tokyo2012/

 


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